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もともとは紀州徳川家の第15代徳川頼倫が、海外の文化に触れて図書館を自国に導入することを決め、明治32(1899)年に東京の麻布飯倉の屋敷の一角に擬洋風建築「南紀文庫」を建てたことに始まります。この施設は増築されて一般公開されたりもしましたが、現在の東京大学の図書館が関東大震災によって失われたために代わりとしてこの文庫にあった夥しい蔵書が大学に寄付され、跡目を継いだ第16代の頼貞は空になった建物のうち、古い部分だけを神奈川県の大磯に移し、別荘として使い始めました。大磯は当時、海水浴が日本で始められた場所として有力者たちの別荘地ともなっており、その中の一軒となるように別荘はVilla del sol「太陽の館」と命名され、それにふさわしいように建物には部分的な改変が施されたようです。その後、建物の老朽化が進んで取り壊しの危機にも遭ったものの、熱海の有名な旅館「蓬莱」が救済の手を差し伸べ、Villa del solは熱海に移されて「蓬莱」のレストランとなり、復活しました。「蓬莱」は近年、星野リゾートに組み入れられて「界 熱海」と改名されています。「界 熱海」は現在、再開業を目ざして休館中です。和歌山県とゆかりのある建物が、こうして熱海に残されることになりました。第16代の徳川頼貞は西洋の音楽に深い愛情を注ぎ、南葵文庫の隣に南葵音楽堂を建てた人物でもあります。彼が収集した貴重な音楽史料は今、和歌山県立図書館に南紀音楽文庫として収められ、その一部が公開されています。