小松市の歴史を感じる、大日ダムの湖底。
離村五十周年記念碑 小原の特徴
大日ダム建設前の小原村の歴史が感じられる石碑です。
年月を経た歴史を刻む石碑が存在し、興味深いです。
近くで釣りを楽しむことができる自然豊かなエリアです。
まぁ、歴史を残す石碑。
大日ダムができる前に小原村があり、そういった歴史が刻まれた悲しくもありしょうがないような気もするし、年月を感じます。
近くで釣りできる。
| 名前 |
離村五十周年記念碑 小原 |
|---|---|
| ジャンル |
|
| 評価 |
3.5 |
| 住所 |
|
|
ストリートビューの情報は現状と異なる場合があります。
|
周辺のオススメ
かつて小松市の山深くに存在した小原(おはら)は、今では湖底に沈んだ集落である。「湖底に故郷小原あり」と刻まれた離村五十周年記念碑は、失われたこの地に暮らしていた人々の記憶を今に伝える。碑文によれば、小原は昭和33年11月に閉町式を行い、全住民が一斉に離村した。ダム建設のために全戸が移転した集団離村は、北陸の山村における大きな転機だった。小原の歴史は、平家の落人がこの地に住み着いたという伝承に始まるとされている。『能美郡誌』に記録されたこの話では、近藤甚右衛門と伊藤孫左衛門という人物が定住したという。また、『小松市史』には、集落内から縄文土器が出土したとの記述もあり、先史時代からの人の営みをうかがわせる。これらの伝承と発見は、小原がただの山村ではなく、長い歴史を背負った土地であったことを示唆している。明治期の町村制施行により、小原は丸山、須納谷、新保、杖の各村と合併し、能美郡新丸村の一部となった。その後、新丸村は昭和31年に小松市へ編入され、小原は「小原町」として行政区画に組み込まれる。だがこの頃にはすでに過疎化が進行しており、戦後の国土開発と重なって大きな転換点を迎えることになる。戦後、農業基盤の整備を目的とした国営大日川ダムの建設計画が具体化し、小原集落一帯はダム湖の水没対象地に含まれることとなった。住民たちは葛藤の末、移転に同意し、1958年11月14日に閉町式を挙行。37戸、212名がこの地を離れ、主に小松市佐美町などへ移住した。その際、小原神社のご神体は佐美町へ遷座され、寺院も他地へ移転したという。離村後、集落跡の家屋は火災によって焼失し、物理的にも小原は姿を消した。現在、かつての集落跡は大日川ダムによって形成された湖「大日湖」の底に沈んでいる。しかし、渇水期には湖面が下がり、旧家屋の石垣や畑の跡などが姿を現すこともある。こうした光景を見守るように、平成20年6月、旧小原町民らの手で記念碑が建立された。碑には「湖底に故郷 小原あり」と刻まれ、離村から半世紀を経た今も、集落の記憶を静かに伝えている。碑は人の背丈ほどの黒色石材で作られており、記念碑のある地点からは、湖底に広がる旧集落の地形を想像することができる。設置場所は、往時の小原集落の全景を望む高台にあり、旧住民や関係者が時折訪れて手を合わせる姿も見られるという。記念碑には、閉町式の日付や全戸数が記されており、かつてここに人々の生活が確かに存在していたことを刻んでいる。この地域の生活文化は、現在では重要有形民俗文化財「白山麓西谷の人生儀礼用具及び民家」として評価されている。これは旧小原町出身の伊藤常次郎が収集・寄贈した資料群で、山村における出産、婚礼、葬送などの儀礼道具1827点と、典型的な民家1棟が含まれる。小松市立博物館などで一部が展示されており、白山麓の生活文化を今に伝える貴重な資料である。小原の隣接地域には、同様に離村した杖(つえ)や光谷(みつたに)といった集落もあった。とりわけ光谷は、1963年の「三八豪雪」によりリンゴ園が壊滅的被害を受け、やむなく全戸が離村した。これらの集落にも記念碑が建立され、集団移転の歴史を今に残している。また、小原の人々が信仰していた白山神社系統の信仰や、那谷寺への参詣などの記録もあり、白山麓地域の文化的広がりの中で小原が位置づけられていたことがわかる。大日川ダム自体もまた、小原の歴史と不可分である。1963年に着工され、1968年に完成したこのダムは、加賀平野の農業用水供給や水道水源、発電に利用されている。湖底には今も、集落の道筋や耕作地、家屋の跡が眠っており、水位が下がったときだけその姿を一部見せる。この現象は2013年ごろにも確認され、旧住民たちが集い、かつての故郷を偲んだと伝えられる。記念碑は観光施設ではなく、地域の記憶と祈りを刻んだ静謐な場所である。その前に立つと、語られない多くの物語が湖の底から響いてくるように感じられる。特に、「湖底に故郷あり」という言葉には、単なる過去の記録ではなく、今なお生き続けるふるさとの記憶が凝縮されている。失われた村の記録としてだけでなく、現代においても過疎や移住に直面する地域の将来を考える上で、大きな示唆を与える存在といえる。